かっきぃーの雑記帳

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東野圭吾のパラドックス・ミステリー3選

東野圭吾作品でときどき出てくるSF小説サイエンス・フィクション(SF)だと頭では理解しつつも、現実の出来事のように没頭できる世界観東野圭吾のなせる技。その中でも時空を超えたパラドックス系作品には現実以上の臨場感が広がります。

そんな東野圭吾パラドックス・ミステリー3選を紹介します。

 

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パラドックス13(東野圭吾

13時13分13秒、街から人が消えた。無人の東京に残されたのは境遇も年齢も異なる13人の男女。なぜ彼らが選ばれたのか。大雨と地震に襲われる瓦礫の山と化した街。そして生き抜こうとする人達の共通項が見えてくる。

世界が変われば善悪も変わる。
殺人すらも善となる。
極限の状態で見えてくる人間の真理とは。
--この世界の謎を解く鍵は、数学的矛盾<パラドックス>にある。

パラドックス13(Amazonウェブサイト)より)

 

もともと私は、巨大隕石が落ちてくるのを阻止する映画や、火山が噴火して壊滅状態の中で生き延びる話など、あきらめずに考え行動すると光が見えるサバイバル系シナリオが好きなんです。

そんな中での都市型サバイバル小説

舞台は東京。銀座や東京駅の地下街、東京タワーなど、よく知っている町ではありながら、誰もいない不思議。

SF小説ではありますが主題は、極限状態で見えてくる人間の心理

現実とリンクし、臨場感があふれる世界で進展する物語にページをめくる手が止まらない。

 

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パラレルワールド・ラブストーリー(東野圭吾

親友の恋人は、かつて自分が一目惚れした女性だった。嫉妬に苦しむ敦賀崇史。ところがある日の朝、目を覚ますと、彼女は自分の恋人として隣にいた。混乱する崇史。どちらが現実なのか? ――存在する二つの「世界」と、消えない二つの「記憶」。交わることのない世界の中で、恋と友情は翻弄されていく。

パラレルワールド・ラブストーリー(Amazonウェブサイト)より)

 

東野圭吾大阪府立大学工学部電気工学科卒業で、「ガリレオ」シリーズなど、科学的視点がふんだんに登場するのがおもしろいところ。このようなサイエンス・フィクション(SF)でも、その強みは発揮され、言葉の使い方や描写のリアルさが、その世界が現実であると錯覚させてくれる魅力があります。

二つの「世界」がなぜ存在するのか。なぜ消えない「記憶」があるのか。その狭間にある理由は何なのか。。そこから始まります。

 

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時生(東野圭吾

「あの子に訊きたい。生まれてきてよかった?」
悩む妻に夫が語る、過去からの伝言

不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、20年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った――。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

時生(Amazonウェブサイト)より)

 

タイムトラベル系小説。時間軸を超えたシナリオのつながり。弱いところ、強いところがあっての人間模様。どんなに短い人生でも感じられる幸せはあるのか。短い人生でも感じられる幸せはどこにあるのか。幸せとは何か。涙がとまらない物語。

 

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アイデアは寝かせておく、の意味 『思考の整理学(外山磁比古)』より

1986年出版という約35年前の本でありながら今でも売れ続けているという『思考の整理学(外山磁比古)』を私も読んでみました。

思考の整理学

イデアを生み出す、考えをまとめて整理するという類の本はこれまで何冊も読んできましたが、この本は具体的な事例や描写が多く、たとえ話も的を射ていて深く腑に落ちる。この辺りが、長年愛されている理由ではないかと感じます。

 

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中でも、私にとって深く感銘を受けたのは【アイデアは寝かせておく】という言葉。

これ自身はときどき耳にするような話ですが、ポイントはただ単にほったらかしにするのではなく、化学反応を起こすべく、ある程度仕込んだうえで寝かせる必要があるとのこと。

ビールをつくるのに、麦がいくらたくさんあっても、それだけではビールができないと同じことである。(中略)酵素を加えなくては麦はアルコールになってくれない。(中略)アルコールに変化させるきっかけになるものを加えてやる必要がある。これは素材の麦と同類のものではいけない。異質なところからもってくるのである。(『思考の整理学(外山磁比古)』より)

とビールづくりに例えて説明があります。どんな仕込みをした方がよいのかなどにも言及があり、なるほどと思わせる点が多かった。

 

そのほか、

中心的関心よりも、むしろ、周辺的関心の方が活発に働くのではないかと考えさせるのが、セレンディピティ現象である。視野の中央部にあることは、もっともよく見えるはずである。ところが皮肉にも、見えているはずなのに見えていないことが少なくない。(『思考の整理学(外山磁比古)』より)

とか

視野の中心にありながら、見えないことがあるのに、それほどよく見えるとはかぎらない周辺部のものの方がかえって目をひく。そこで、中心部にあるテーマの解決が得られないのに、周辺部に横たわっている、予期しなかった問題が向うから飛び込んでくる。(『思考の整理学(外山磁比古)』より)

とか

思考の整理というのは、低次の思想[断片的なひとつひとつの着想]を抽象のハシゴを登って、メタ化[抽象度の高い状態]していくことに他ならない。(中略)整理、抽象化を高めることによって、高度の思考となる。普遍性も大きくなる。(『思考の整理学(外山磁比古)』より) ※[]内は私が注釈

など、漠然と感じていたことが改めて文章で説明してくれているところも多く、『思考の整理学(外山磁比古)』を読んで、思考が整理される面も多々。

 

ベストセラーなので、すでに読破した人も多いと思いますが、これは複数回読んでカラダに染みこませたい1冊でした。

 

 

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ハラスメントの切り口で企業の闇を暴いていくエンタメ企業小説『ハラスメントゲーム(井上由美子)』

最近、企業小説にハマっています。

といっても、池井戸潤ばっかりだったけどな!

池井戸潤小説は銀行を舞台にしていましたが、これはタイトルどおりハラスメントがテーマ。

セクハラ、パワハラだけでなく、

といったものや、

  • ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
  • パワハラ
  • 世話焼きハラスメント(セワハラ)
  • 家事ハラスメント
  • エアーハラスメント

なーんてものまで登場します。テーマは「ハラスメント」ではありますが、この小説のおもしろ味は「仕事に対する想い」「思惑・陥れ・策略が交錯する人間関係」「難物を落とす交渉力(交渉術・交渉態度)」といったところ。

 

違和感から問題の本質を読み解き、誰の何が正しいのかを暴いていくスッキリ感。これも魅力!

 

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さらには、ひとつひとつのハラスメント事例をもとにした個別の小ストーリーのウラにある一貫した大きなストーリーもあって、小説終盤の盛り上がりに突入。このクライマックス感がたまりません。

 

そして、明日は我が身のハラスメント。会社員生活の身を引き締めるテキストでもあります。

 

 

ココロに残った一節を紹介します。

間違ったことをしている人間に注意すらしないことを見殺しと言います。その方がよっぽど残酷で無慈悲なパワハラです。

うーん、実に示唆に富む。

ハラスメントゲーム(井上由美子)

かつて凄腕で鳴らし、あることをきっかけに地方に飛ばされていた秋津渉(あきつ わたる)がマルオーホールディングス本社に呼び戻され、コンプライアンス室長に任命された。
会社のリスクマネジメント業務を携わるコンプライアンス室には、セクハラ、パワハラ、パタハラなど一筋縄ではいかないハラスメント問題が山積みで、唯一の部下である高村真琴(たかむらまこと)とともに難題に立ち向かっていく。
経営を揺るがしかねないハラスメント問題を解決していくうちに、三代目社長と実力者の常務との対立に巻き込まれ、さらに会社存続に関わる深い闇があることがわかってくる。
果たして秋津たちは会社の危機を救うのか? それとも――。

ハラスメントゲーム(Amazonウェブサイト)より)

 

 

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できる分けがない!と誰もがいう困難を乗り越えていく小説『レバレッジ!(大原省吾)』の涙と達成感

絶対に失敗するに違いない!できる分けがない!と誰もが口を揃えていう困難を乗り越えていく映画や小説が実は好きなんです。

むしろ燃えます。

先日読んだパニック小説『計画感染(大原省吾)』(改題「首都圏パンデミック」)のスピード感爽快感をふたたび味わいと手に取ったののがこの『レバレッジ!(大原省吾)』。このストーリーはまさに不可能を可能にする!というテーマ。

レバレッジ!(大原省吾)

イラクレアメタルの調査に行った商社マンが、クルド人過激派グループに拉致された。アメリカ政府や資源メジャーの陰謀が見え隠れするなか、日本政府は救出に及び腰。そんななか、6人の同僚が立ち上がった。期限は1週間。自己資本ゼロの状態で、国際市場から身代金の5000万ドルを調達できるか!?巨大な象を倒すべく、蟻たちの戦いが始まった。(「BOOK」データベースより)

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この紹介にあるように「期限は1週間。自己資本ゼロの状態で、国際市場から身代金の5000万ドルを調達できるか」という金融経済を主題にした小説には違いないのですが、真の面白さは登場人物の想い覚悟あきらめない心

特に想いの部分は、過去に受けた恩敵対してきた同僚に対する葛藤秘めた愛情などなど多岐にわたる。

徐々にみえてくる課題解決に向けたシナリオ積み重なるトラブルに対する行動。そのドキドキ感がたまらない。

たまりまへんなあ。
まさに『ミッション:インポッシブル』!

さらに加えると、SFのチカラではなく、人と人との関係で解決していくというか、アナログで解決していくというか、より現実味があるのが特に興味深い。そんな1冊です。おすすめ。

単純だから、自分もやってのけたいと思っちゃう。

レバレッジ!

レバレッジ!

  • 作者:大原 省吾
  • 発売日: 2013/02/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

こちらもおススメ!

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今週のお題「告白します」


東京を封鎖して感染源を徹底隔離。クライシス小説「首都感染(高嶋哲夫)」

首都感染(高嶋哲夫)

二〇××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率六〇%の強毒性インフルエンザが出現! 中国当局の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。(「Books出版書誌データベース」より)

 

元WHOメディカル・オフィサーの経験をもつ医師(主人公)が政府との協働体制で強毒性の新型インフルエンザに立ち向かっていく軸を主に、そこに関わる国民の動きや世界の動向といったマクロ的なストーリー、そして、主人公を取り巻く人々のの想いや悩み、行動に焦点を当てたミクロ的な人間模様が絡み合って、危機に立ち向かっていく小説である。

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まるで予言の書

この小説が出版されたのは2010年。新型コロナウイルス生活様式が一変した2020年のちょうど10年前。

中国での発生、世界中への拡散、ウイルスの封じ込め、手指消毒などの衛生管理、医療崩壊などなど、現実に起こっている新型コロナウイルスCOVID-19の現実を見ているような、フィクションではなくドキュメンタリーのような真実味のあるストーリーに惹かれる。

そのノンフィクションぶりは枚挙に暇がなく、手洗い、うがい、マスクの着用、人混みには近づかない。消費は落ち込み、町はガラガラ。旅行、コンサート、展覧会は軒並みキャンセルや中止。などなど、まさにコロナ禍同然。

空港での検疫、ホテルでの隔離っていうのも、現実に起こった。

濃厚接触といういうキーワードもすでに出ているし、感染源の特定のための行動範囲調査、これもそのまま。

ウイルス感染の業界では当たり前のことなのかもしれないが、我々一般人にとってみれば、まるで予言が当たったようなもの。

この小説ではこんなウイルス・パンデミックな世界をどのように対処していくのか、ひとつの解を示すシミュレーションのようなものである。

 

不気味な一致。小説を越えた感。

致死率60%で世界人口71億人のうち、80%の56億8000万人が感染し、12億5000万人が死亡したという毒性は、現実世界の新型コロナウイルスCOVID-19に比べて強すぎるが、無症状の潜伏期間の間にウイルスを撒き散らす傾向が同じであるなど、不気味な一致もある。

小説での新型インフルエンザは潜伏期間は5日間だけど、現実の新型コロナウイルスCOVID-19の潜伏期間は最大14日間とも言われ、その多くが感染から5~6日程度で発症するというもんだから、小説を越えた感もある。

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「感染を抑え込むこと」と「経済を回すこと」の相反する選択肢

新型コロナ禍で目下話題になっているGoToトラベルの是非。「感染を抑え込むこと」と「経済を回すこと」の相反する選択肢において決断されたひとつの方法。この小説では、現実とは真逆で感染源を例外を認めず、徹底的に封じ込める選択肢を選んだ場合のシミュレーション。

毒性が大きく異なるので、どちらが正しいかは何とも言えないが、その結果は気になるところである。

東京封鎖!

「レインボーブリッジ封鎖できません!」の比ではない!

 

新型コロナ禍で読むパンデミック・パニック・クライシス小説 

ここ最近、ウイルス感染パンデミック小説を読み込んできた3冊目だったが、その中でも一番、現実味を感じるものだったように思う。

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半世紀前に刊行された「日本沈没(小松左京)」。今も楽しめる3つの魅力!

1973年(昭和48年)に刊行され、いくつもの賞を受賞し、映画化(しかも2回!)、テレビドラマ化、ラジオドラマ化された「空前の大ベストセラー」とも評された小説。

小説「日本沈没(小松左京)」

もう半世紀も前に出版された本ですが、たびたび話題になってましたし、何より、

  • 私の好みであるパニック小説
  • 日本列島が沈没するという身近な舞台
  • 日本列島がなくなるとどうなるの?という興味

で、いずれは読んでみようと思っていましたが、ようやく完読しました。

 

おもしろさ[1] 迫真の科学的描写

深海潮流、海水異常振動、負の重力異常帯、地熱流異常帯といった地球物理学的視点で見る現象の数々、日本列島形成の一説など、科学的な描写がこの作品の魅力のひとつかと思います。

私にはその知見はないので、空想なのか、実際にあるのか、まったく分かりませんが、その迫真的な表現に現実を感じました。

8千メートルの海底、800気圧(1平方センチあたり800㎏)の世界など、海底地形や環境の描写も繊細で、何が起こっているかがわからない恐ろしさに心拍数もあがります。実現象モデルとした地球内メカニズムの仮説も臨場感アリです。

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おもしろさ[2] それぞれの立場での苦悩と判断

日本の深海で起こっている現象を知り、これから起こる悲劇を現実のものに感じつつも、どのように社会に知らせていくかに苦悩する学者たち。本当に日本が沈没するかどうかが分からないまま、海外退避計画を推し進める総理大臣。秘密裏に日本難民の受け入れを打診される海外諸国の首脳。そして、日本国民。

主人公のひとりである潜水艇操艇者とそれを取り巻く友人・知人、そしてヒロインの視点も。

それぞれの立場に降りかかる難問と乗り越えるための苦悩、そして判断。

沈没する日本に対する各国の思惑や安全な場所から興味本位で見る海外諸国のマスコミなんかも。

おかれた状況の描写が精細だったり、現実味を帯びていたり。
パニックだけではない、人々の交錯する想いも見どころのひとつ。

 

おもしろさ[3] 半世紀前にみた未来予想図

197X年とされる近未来設定。2020年の今となればもうはるか昔のこと。当時考えていた未来予想図と現実のギャップも見どころのひとつ。

超電導リニアが全線の測量が終わり工事が始まっている世界となっていたりとか。

中央リニア新幹線の品川-名古屋間の開業は2027年らしいです。

潜航深度8,000mの深海探査艇とか。

現在活躍中の「しんかい6500」の潜航深度は6,500mみたいですね。

 

日本が沈没するほどの災害を仮想体験する

噴火、地震津波、沈降浸水。次々起こる災害は日本列島の構造形成にも影響を与えるほどに。

過去に一度も起こったことがないことでも、未来には起こり得ないとはいえない!(日本沈没[下])

とあるように、最近の気象現象でも、50年に一度の大雨が度々発生する等、本当に何が起こってもおかしくない世界になってきています。

日本沈没は極端な例としても、こうした小説による仮想体験をもとに、意識を高めておくのが大切ってことですかね。

さあ、ボクならどうしようか。

船買うか、船。
豪華客船。

とりあえず、もう一度読み込んで、ふたたび仮想体験ですね。まだ読んでいない人は是非!

日本沈没(上)

鳥島の南東にある無人島が、一夜にして海中に沈んだ。深海潜水艇の操艇責任者の小野寺は、地球物理学の田所博士とともに、近辺の海溝を調査し、海底での異変に気づく。以降、日本各地で地震や火山の噴火が頻発。自殺した友人を京都で弔っていた小野寺も、地震に巻き込まれ、消息不明になるが、ある日突然、ナポリの消印がある辞表が会社に届く。どうやら田所の個人研究所と関係があるようで……。日本SF史に輝くベストセラー。(「Books出版書誌データベース」より)

 

 

日本沈没(下)

ついに巨大地震が東京を襲い、富士火山帯の火山が相次いで噴火。対応に追われる日本政府は、海外に国民を移住させようと、密かに交渉を進めていた。一方、田所博士が中心となって立ち上げた「D計画」の一員となった小野寺は、潜水艇で海底の調査を行う日々を送っていた。ある日、防衛庁にある計画本部の総務室で、「日本列島は沈没する!?」という見出しがついた週刊誌を目にし――。日本はどうなるのか!? 全国民必読のベストセラー。(「Books出版書誌データベース」より)

 

 

 

数々の災害は起これども、また立ち上がり、復興を重ねてきた先人の日本人に感謝ですね。

ありがたや、ありがたや。

今週のお題「感謝したいこと」

 

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絶望を乗り越える!産業スパイ小説・鷹野一彦シリーズ「太陽は動かない」「森は知っている」「ウォーターゲーム」(吉田修一)

絶望の中でも、最後まで生きることを諦めない!

産業スパイ小説というのを初めて読破しました。
しかも、シリーズ3部作をすべて完読。

産業スパイは、私にとってあまり馴染みがない業界!

馴染みがあっても困る!

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謀略・誘惑・疑念・野心・裏切りが交錯。誰が敵で誰が味方かが分からず、そして、敵と味方が日々刻々と変わっていく複雑さで展開が読めないハラハラ感。

忍び込みのドキドキ感、時々差し込まれる生死を分ける綱渡り。絶望。でも、最後まで任務を、生きることを諦めず、そこから生き抜くアクション・シーン。このスピード感が病みつきに。

人を信じる、信じない。さみしさ。絆。出会い。裏切り。覚悟。金。性愛。名誉。幸福。重厚な人間ドラマも見どころ。

複雑な状況での的確な判断が求められる世の中を生き抜くヒントも!

スパイになるための勉強にもなる!(かも)

そんな、産業スパイ小説・鷹野一彦シリーズ3部作「太陽は動かない」「森は知っている」「ウォーターゲーム」、おススメです。

 

ちょっと難しいと感じる人はシリーズ第2弾「森は知っている」を初めに読むのがおススメ。

当初、シリーズ第1弾「太陽は動かない」から読み始めたのですが、ホーチミンベトナム)、上海・敦煌の砂漠、ウイグル(中国)、韓国、アメリカ、日本、、と舞台が大きく、かつ、テーマが国家レベルのスケール。誰がいいもんで、誰がワルもんかも分からず、私の理解力を超えてしまったので、途中で読むのをやめ、先に第2弾「森は知っている」を読んでみることにしました。

カタカナの人名と地名に慣れていないのもある。

第2弾「森は知っている」は、主人公・鷹野一彦が17歳の頃の物語で、駈け出しの産業スパイとして登場。生い立ちや産業スパイになるまでの背景、主人公の所属するスパイ組織がどのような組織なのかも分かる。第1弾「太陽は動かない」の登場人物もちらほら出てきて、人物と人物の関係性や人柄なども把握することができ、読みやすかった。

こうやって、第2弾「森は知っている」を読み終わった後、第1弾「太陽は動かない」を読むと、よく分かる、よく分かる。複雑さの奥にある面白さにたどり着けました。

辛いキチム鍋を食べたとき、痛辛いだけで、美味しく感じなくても、生たまごを投入するとマイルドになり、辛さに隠れた美味しさを感じるようになるのと一緒!

???

鷹野一彦シリーズ、味付けが異なって楽しめる!

鷹野一彦シリーズは産業スパイもので、情報の取り合い、奪い合い。味方のような敵のような関係。謀略・誘惑・疑念・野心・裏切りありの人間模様。そして、窮地に陥り、生死をさまよい、そして、あきらめずに次の一手を考え抜く頭脳と覚悟。

このような基本的な枠組みは同じだけど、それぞれ味付けが異なって楽しめます!
そんな鷹野一彦シリーズ第1弾~第3弾を紹介します。

太陽は動かない

油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件。産業スパイ組織AN通信の鷹野一彦は、部下の田岡とその背後関係を探っていた。目的は機密情報を入手し高値で売り飛ばすこと。商売敵のデイビッドと謎の美女AYAKOが暗躍し、ウイグル過激派による爆破計画の噂もあるなか、田岡が何者かに拉致された。息詰まる情報戦の末に、巨万の富を得るのは誰か?産業スパイ“鷹野一彦”シリーズ第1弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 

鷹野一彦シリーズの第1弾。謀略・誘惑・疑念・野心・裏切り、生死を分ける危機的状況とスピード感あふれる脱走劇。広くアジアを舞台に広げた大きなスケールが魅力。

 

森は知っている

南の島で知子ばあさんと暮らす十七歳の鷹野一彦。体育祭に興じ、初恋に胸を高鳴らせるような普通の高校生活だが、その裏では某諜報機関の過酷な訓練を受けている。ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも―!?その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとなる初ミッションに挑むが…。

(「BOOK」データベースより)

  

 

第1弾「太陽は動かない」の背景となる主人公・鷹野一彦の青春期の物語。どのようにして産業スパイになったのか。悲惨さと愛情が入り混じる駆け出し時期の心の葛藤。

「俺のことを覚えててほしいんだ」という言葉にある覚悟と寂しさ、生きている証、そして、未来へ続くストーリー。

駆け出し時期といっても、息を飲むスリルたっぷりのスピード・アクションシーンは健在!

ウォーターゲーム

突如ダムが決壊し、濁流が町を呑み込んだ。水道民営化の利権に群がる政治家や企業による爆破テロ! ?秘密組織エージェントの鷹野一彦と田岡亮一は次の爆破計画を阻止するために奔走するが、事件の真相に迫るスクープ記事が政財界を揺るがす大スキャンダルを巻き起こす。テロの首謀者は、そしてこの情報戦を制する者は誰か。シリーズ三部作完結!

(「BOOK」データベースより)

  

 

たんなるシリーズの1話ではない。第1弾、第2弾を踏まえたストーリー。もちろん、第3弾から読んでも楽しめるが、第1弾、第2弾に続いて読むと、相乗効果で面白さが倍増する面もある。

おすすめです。 

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