新型コロナウイルスで猛威で、すっかりと世の中の構造が変わってしまいました。まさに小説の世界のようです。ということで、ここ最近、ウイルス感染拡大が題材になっている 小説を読みまくっています。
今回はその第2弾「バベル(福田和代)」を紹介します。
『バベル』(福田和代)
新型ウイルスの出現によって、日本中がパニックに―― ある日突然、同棲している恋人が高熱で意識不明の重体となり、 救急車で搬送される。彼に付き添い続けた悠希にも、魔の手がしのびより ……。 感染爆発が始まった原因不明の新型ウイルス「バベル」に、人間が立ち向かう術は あるのか? 日本政府はある対策を講じる決断をする。 近未来の日本を襲った緊迫のバイオクライシス・ノベル! いったんバベルウィルスに感染したら、死ぬまで逃れられない。 患者が爆発的に増え、ワクチン開発は間に合わない。 一縷の望みをかけて、日本政府はある秘策を実行した――。
(「Books出版書誌データベース」より)
新型コロナウイルスで大きく変わった社会構造とリンク
ここで猛威を振るうのは、新型コロナウイルス(肺炎)ではなく、新型脳炎ウイルス。炎症が起こる部分こそ違いますが、その感染拡大に伴う患者や家族、医療関係者のおかれた環境や意識は近いものがあるのではないかと感じます。
社会構造変化についても次のような描写があり、今の置かれた状況とつい比較してしまいます。
厚生労働大臣が昼過ぎに記者会見を行い、不要不急の外出を避け、二週間程度の食料を用意して自宅待機することを進めるという談話を発表した。企業には可能な限り社員の在宅就業を認め、通勤電車や、社内における新型脳炎感染を防ぐようにという通達も出ている。
(「バベル(福田和代)」 より)
まさに、緊急事態宣言!
新型インフルエンザが流行したときには、各地でマスクが売り切れる騒ぎになった。今回はそれ以上の人々が薬局に殺到することになりそうだ。
(「バベル(福田和代)」 より)
私もマスクを探して町中を歩き回りました。
まるで予言してるみたい!
コロナ禍の今となっては ノンフィクションのドキュメンタリーを読んでいる気分になります。
さらなる感染拡大を受けての日本政府の秘策
感染初期から感染拡大期が描かれた前半から中盤にかけて、この小説での中核、さらなる感染拡大を受けての日本政府の秘策が出てきます。その策がどのように社会に浸透して、影響していったか、小説の中の日本人はどんな行動をとってきたかが興味を惹くポイントです。
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そして、新型ウイルスはどうなった?
新型コロナウイルスのワクチンも治療薬もまだない今、気になるのはこれからの行方。小説とはいえ、どのような結末になっていくかは気になるところ。
病状やウイルスの性質に関する描写が詳しく、また、小説前半での社会構造の変化を言い当てていることから、つい現実味を感じて惹き込まれる。
そんな中でてきた「ウイルスの弱毒化の兆候」というキーワードは、新型コロナウイルスの発症者が減りつつある2020年8月~9月において特に期待したいキーワード。
日本政府の秘策とは何か。
そして結末は?
ここで描かれた手段までは、現実の日本政府は取っていませんが、それに近いことが起こっていてもおかしくないと感じるぐらいの臨場感。
ちょっと言いすぎちゃうか?
さすがにここまではしないやろー。しらんけど。
初版は2014年で6年前。そのころは丸ごと小説だったはずですが、今となっては現実と小説が交じり合う不思議な感覚を覚える小説。そんな本でした。
これが前回読んだ新型ウイルス・パンデミック・パニック小説の読書感想文!
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